人事部長や経営者が、採用後の離職に悩んで ChatGPT に相談するとこんな回答が返ってきます。「オンボーディング制度を整備しましょう」「メンター制度を導入しましょう」「評価基準を明確にしましょう」正論です。誠実な提案です。あなたはその提案を実行します。研修プログラムを作り、先輩とのマッチングを工夫し、評価シートまで整えた。それなのに。相変わらず新入社員は3ヶ月で「こんなはずじゃなかった」と辞めていく。この違和感の正体は何か。実は、あなたが AI に投げた「問い」が、そもそもズレていたのです。

こんな方に読んでほしい

  • 採用しても3〜6ヶ月で辞める人が多い
  • オンボーディングやメンター制度を導入したが、離職率が変わらない
  • 「人手不足だから誰でもいい」で採用している
  • AIに「人材定着の仕組み」を相談したことがある
  • 経営者としてなぜ人が辞めるのか、根本理由が見えていない

よくあるケース

よくあるケース

「オンボーディングを整備しましたが、辞める人は減りません」

製造業の中堅企業。人手不足で新人採用を増やした。来た人は3ヶ月ほどで「仕事が思ってたのと違う」「職場の雰囲気が合わない」と言い残して辞めていく。

経営者は危機感を持ち、HR部門に指示した。「受け入れ体制を整えろ。新人研修をしっかりやれ」

こうして、新人向けのオンボーディング研修が構築された。工場のルール、製品知識、安全手順、先輩との関係作り。全てをプログラム化した。

それでも、辞める人は減らなかった。むしろ、新人研修に時間と予算を使っているのに、成果が出ないことへの疑問が経営陣に生まれた。

定着の問題は、実は採用後の問題ではない

ここが最大の落とし穴です。「辞める人が多い」という課題をそのまま AI に相談すると、AI は「定着率を高める施策」を提案します。

これは AI の誠実さです。しかし。本来の問題は「採用時の選別」にあるのに、「採用後の環境」を改善する提案をされているわけです。

いくら採用後の仕組みを充実させても、相性の悪い人を採ってしまえば、その人は結局合わないままです。

新人を責めるわけにもいかず、制度を責めるわけにもいかず。実は、「この人をなぜ採ったのか」という根本の問いに目を向けていないのです。

問いをズラされている瞬間に気づく

あなたが悩んでいることは「人が定着しない」です。本来、問うべきことは「うちの会社にはどんな人が合うのか。合わない人とは何か」です。

ところが、AI(や HR コンサルタント)に相談すると、提案されるのは「定着を高める仕組み」です。両者は似ているようで、全く違う問いです。

前者は「人の条件」についての問い。後者は「組織の条件」についての問い。

採用が失敗しているのに、採用後のことだけ改善しようとしても、本質は変わりません。多くの経営者は、ここで問いをズラされたことに気づきません。

「うちに合う人」が見えると、採用が変わる

あなたの会社で5年以上働いて、活躍している人は、どんな人ですか。給与や学歴ではなく、その人たちが持つ「共通の特徴」を想像してください。

例えば。意思決定が速い職場では、「待つことが苦手な人」が長く働いている。新規開拓が中心のビジネスでは、「不確実性に強い人」が成長している。顧客の細かいニーズに応える仕事では、「完璧さを求める人」が活躍している。

こうした「うちに合う人の条件」が見えれば、採用面接でそれを確認することができます。採用時に「この人、うちの意思決定ペースについていけるか」「不確実な状況で焦らないタイプか」を見極めることが可能になるのです。

これができていない企業が「誰でもいい」で採用して、3ヶ月で「相性が悪い」と気づくわけです。

問いを立て直す視点

ここで、あなたが立てるべき問いをシンプルにします。

「人が定着しない」ではなく「うちの会社にとって『合う人』と『合わない人』の違いは、何によって分かれるのか」です。

この問いを自分たちで言語化できれば、以降の採用判断が大きく変わります。採用後の仕組みをどんなに充実させるよりも、採用時の選別精度を高める方が、定着の悩みは減るのです。

ビジネスヒント

AI は「定着施策」を正しく提案します。だからこそ、経営者側が「本当に問うべき問い」を自分で立て直す必要があります。あなたの採用課題は「採用後」ではなく「採用時」にあるかもしれません。採用時の相性判断が精度を持つと、採用後の仕組みは最小限でも効果が出ます。

この記事のまとめ
  • 「人が定着しない」という課題を AI に相談すると、定着施策が提案される。これは AI の誠実さだが、問いがズレている可能性がある。
  • 本来問うべきは「採用後の仕組み」ではなく「うちの会社に合う人とはどんな人か」という採用時の選別。
  • 自社で長く活躍している人の特徴を言語化できれば、採用面接での見極めが変わる。
  • 採用時の選別がうまくいけば、採用後の仕組みは最小限でも効果が出る。
Question
あなたの会社で考えてみよう

うちの会社で長く活躍している人の共通点は何か——給与や待遇ではなく、その人たちが持つ「仕事への姿勢」「環境への適応能力」「意思決定のペース」など、相性に関わる共通点を見つけてください。その共通点こそが、採用面接で見極めるべき「合う人の条件」になります。